ある日、一回り以上年が離れた自分の部下のA子と2人だけで食事をしに行くことになった…。

いつも自分に向けられた尊敬の眼差しや、人懐っこい接し方に、漠然とながら「もしかしたら俺に好意を持っているかも?」と半分、下半身の方も期待してのディナーだった。

夜景の見えるお洒落なレストランで美味しいイタリアンとワインを楽しんだ。

彼女は終始リラックスした雰囲気で、お酒のせいか、普段話さない様なプライベートな話まで深く話してくれた。

「私、実は3年も同棲していた彼氏と先月別れたんですよ」
「やっぱり年下は考えがお子様で私には無理だったかな…」
「私って15歳上の人とも付き合った事があるんですよー。課長はなんで奥さんと別居されたんですか?」

色んな会話が飛び交う中、如何に自分の方に引き込もうか?

あわよくば、どうやって口説こうか?頭の中がフルスロットルに動く。

そして会話はどんどん自分の希望する流れに進んでいった。

「課長みたいな人が彼氏だったら良かったのに…」

マジか?これは来たか?
まさかのチャンスが到来なのか!?

二人はごく自然に、手を恋人繋ぎの様に指を絡ませながら、ラブホ街へと向かった。
職場ではあるが、密かに好きな子をゲットした夜。

しかも年齢は28歳でまさかの30歳以下の若い女性。
普通であれば風俗と飲み屋以外ではもう相手にされない年齢と半ば諦めていた自分にとって、最高のチャンスが到来したのだ。

年甲斐もなく動悸が高まりまるで中学二年生の童貞君みたいだ。

シャワーを浴びて、バスタオルを1枚だけ巻いて恥ずかしそうにベットにくるまっているかなり年下の可愛らしい部下。

ここまでは完璧だった。

しかし、運命はまさかの最高調から急転直下に向かうのです。

そうです。
こんな人生でも滅多にないチャンスで…まさかの中折れです!!

ペニスが刺激に反応しないのです。

そんなバカな?

相手に口で刺激してもらい、70%位までは何とか固くなるのだけど、いざ挿入しようとペニスを女性の入り口にあてがう時には「シューん…」と、うなだれて元気が無くなるのです。

ペニスの根本を握り、一時的に膨張させてトライしたり、何とかして挿入を試みるも、すぐにフニャフニャになり押し出されてしまうのです。

いくらお酒が入っているとは言え…今までこんな事は有りませんでした。

ご経験のある方は共感してもらえると思うのですが、挿入時に何度も元気が無くなると、相手も気を使うし、またそれが自分も焦るしその焦りの空気が相手にも伝染して微妙な雰囲気になってしまう…もう地獄のプレッシャーです…。

「課長はお仕事大変だから、お疲れなんですよ」
「男の人ってそう言う日もあるって聞くし、気にしないでください」

とても優しい言葉を掛けてもらい何とか自分のプライドは保たれた。

「あー、なんで勃起しなかったんだろう…まあ、次こそは必ずリベンジを果たすぜ」

しかし、そのリベンジを果たすどころか、後日とんでも無い会話を耳にしてしまうのです。


それは、あのショッキングな夜から数日後の出来事だった。

出先の商談を終えて、予定より早く会社に戻った時にA子がスマホで話している姿を見ました。

早く戻ったと言っても、定時は超えていたので他の人間は既に居なく、A子ももう帰る支度を終えていた。

「そうだ、また次回デートの予定でも聞いてみよう」そう思い物陰から通話が終わるタイミングを伺っていた。

しかし、その内容が…もしかして先日のあの夜の事を話しているのか?

盗み聞きは悪いなと思いつつも、内容が気になり耳を傾けていると、この後、彼女のものとは思えないとんでも無いセリフが飛んできた。

「あー、素敵な上司だと思ったのにガッカリ…」「ちょっと良いと思ったけど、インポマンでマジ使えねー」

イ、インポマン!?
マジ使えない…
ガッカリ!?

俺は耳を疑った。普段からは到底想像が付かない言葉使いだ。優しくて労ってくれたあの言葉は全然本心ではなかったのだ。

あの自分に向けられていた尊敬の眼差しや…クリクリとした表情で微笑み掛けてくれる可愛らしい仕草。

確かに、あの晩ホテルに行くまでは二人の関係は暖かく友愛に満ちたものだった。

スマホ越しに冷めた表情で衝撃的な言葉を言い放つ彼女の姿を見ながら…今迄築き上げて来た仕事の信頼や、男としてのキャリアが音を立てて崩れていくのを感じた。

不覚にも足がガクガク震えた。何とかその場に倒れ込まないように抑えて壁に手を這わせながらかろうじてその場を離れた。

「あー、素敵な上司だと思ったのにガッカリ…」
「ちょっと良いとは思ったけど、インポマンでマジ使えねー」

この言葉が深く刺さった。
15歳以上も歳の離れた、娘にも近い女性にケチョンケチョンにこき下ろされ、信頼していた純情も踏みにじられ何とか保っていた男のプライドも根こそぎ崩壊した瞬間だった…

…絶望の種は知らないうちに貴方の内側に植えられて、ある日勃起不全と言う形で突然襲って来ます。

Mさんはこんな些細な事がきっかけで、男としての自尊心を持てなくなっていくのです。

その結果訪れた望まない未来は聞いていても心が痛く、いたたまれない気持ちになりました…。


【あれから3年の月日が流れた】

A子はその後若い同僚と結婚して寿退社をした。

夫は俺の直属の部下だ。仕事のストレスがやばい……イライラして常に気分が晴れない。

だから妻とも上手くいかないし、出会い系の女には中折れを馬鹿にされる始末だ。

なんでこんなに上手く行かないんだ!?
なけなしのお金で風俗に行ってもインスタントで業務的なサービスばかり俺は流れ作業の部品なのか?

そんなの求めていない!
俺は愛情のあるSEXがしたいんだ。
でもいつも気持ちと裏腹に中折れしてしまう。

更には追い討ちをかけるように、気持ちよさも年々薄れて来てる。
勃起不全でこんなに自信がなくなる物なのか…

女の侮辱の視線、落胆と失望を与えてしまったと言う負い目、だんだん女性に対して自信が無くなる。

自信が無い…
自信を持てない…

だから仕事でもミスばかりするし、全てのに対して自信を持って取り組めない。

上司のいわれのないイビリ…

A子の夫である部下を見る度に、彼女の吐き捨てるように放った言葉と心底ガッカリした顔を思い出す。

なんなんだ…
何なんだこれは!!

俺はただ幸せになりたくて
懸命に頑張っているだけなのに…

もうオナニーでさえも
ペニスはふにゃふにゃで射精までいかない。

情けなくて…
一体なんだって言うんだ!

どいつもこいつも俺を見下しやがって。
俺からオナニーの快楽すらも奪っていくのか…

やり場の無い憤りで涙が出て来た。